はじめに
2008年頃に購入したコーヒー焙煎機(カフェプロMR-101)が故障しました。
焙煎中に豆を攪拌するモーターが回らなくて、豆が焦げてしまいます。
週に2回程度の焙煎とはいえ、12年間故障なしで動いていました。頑丈ですね。
メーカーに修理に出そうとも思ったのですが、購入後10年経過した場合は修理の対象外らしく、自分で直すことにしました。
お約束
- この記事に掲載されている内容は自己責任で試してください。
- もし実行する際には、この記事だけでなく、参考にさせていただいた動画も視聴されることをお勧めします。(特に初めてカフェプロを分解される方)
- この記事に掲載されている通りに修理した場合、可能な焙煎量が3/4ほどになってしまいます。
(通常だと付属の計量スプーン2杯の焙煎が可能ですが、1.5杯程度になってしまいます。)
- 故障の原因は機種により様々です。本記事は攪拌用モータの故障に対しての修理方法です。
- 修理対象の機種は2008年頃に購入したものです。時期によって、内部の構造や部品が変更されている可能性があります。
- この記事への問い合わせがあったとしても、回答をお約束することはできません。
参考にさせていただいたサイト
ちょっと電気系をかじったことがある人ならば、この動画を見て試行錯誤すればできると思います。
一方で、一般人に対しては説明が不足している部分もいくつかあります。
誰かの役に立つかもと思って私なりに手順をまとめておきます。
(一般人は素直に買い替えろって意見もあるとは思いますが、直せるものは直したいですよね。)
コーヒー豆焙煎機カフェプロ101の修理をDIYでやった記録
この記事で扱っている故障の事象
豆を攪拌する部分が回らなくなってしまった。
もしくは、最初は回っているけれどもいつの間にか回らなくなってしまう。
豆を攪拌する部分とは以下の部分です。
故障の原因
モータに負荷がかかった場合に、「ガガガ」といった音がします。
おそらくその時にギアに負担がかかっていつしか削れてしまい、最後には回らなくなったしまったのではないかと思われます。
つらい思いをさせていたんですね。ごめんなさい(´;ω;`)
解決方法
単純に言えばモーターを付け替えること。
同じ性能で同じ大きさのモータが手に入れることができれば簡単です。
一方、同じモーターが手に入らないと少し工夫をすることが必要になります。
準備するもの
何を買えばいいかわからない人は、以下の部品を揃えてください。
- シンクロナスモータ(具体的な製品は後述):できるだけ元のモータに近いものを。
- カップリング(具体的な製品は後述):モータと攪拌棒をつなげる部品。要不要やそのスペックはモータに依存する。
- はんだごて&ハンダ:モータのコネクタを移植する際に利用する。ダイソーでも買えます。
- 熱収縮チューブもしくは自己融着性絶縁テープ:コードの絶縁に必要
以下、特に注意すべき部品について詳細に記載します。
シンクロナスモータ(同期モータ)
オリジナルのモータ
このモデルはカタログに記載がありませんでした。個別発注したモデルの可能性があります。
J205モデルに属するようですが、カタログの一般スペックとは軸径やその他サイズが異なります。
- メーカー名:CKD日機電装株式会社
- モデル番号:J205-297
- 入力電圧、周波数:100v, 60Hz
- 回転数:60 rpm
- 消費電力量:5W(明示はない。J205 モデルのスペックより推定)
- 軸の直径:6mm
- 軸の長さ:約15mm
実際の機種のサイズを計測しました。
同スペックかは定かではないですが、J205モデルの出力特性をカタログから取っておきます。
こちらは実際の写真です。
長年使っているので、ずいぶんと古びてしまいました。
12年の歴史は伊達じゃないですね。
今回購入したモータ
いろいろ探しましたが、個人が手軽に買えるものでは以下のモータが一番良いかと思います。
AliExpressで送料込み1000円しません。
(以下のリンクはアフリエイトではありません。)
ja.aliexpress.com
基本スペックは以下の通り。
- メーカー名:BRINGSMART
- モデル番号:TYC-50
- 入力電圧、周波数:5-24v 110v 220vのいずれか。50/60Hz
- 回転数:1.4 ~70 rpmまで選択可能
- 消費電力量:4W
- 軸の直径:7mm
- 軸の長さ:約18mm
取り付けに影響がありそうなところを赤字で記載しています。
軸の直径が異なるため、カップリングを変える必要があります。
軸の直径は長くなりますが、今回はそのまま使えそうです。
電力量がオリジナルより小さいのが一番の難点です。多分70%くらい。
(オリジナル:5W, 今回購入:4W。かつ、電圧がわずかに異なるため、さらに出力の差が広がる。)
電力量が小さい=モータの出力が小さいので回転する力が少し弱くなります。
よって、豆をかき混ぜるときにトラブルが起きる可能性があります。
回転する力を上げるには回転数が低いものを選べば良いのですが、すると今度は豆の攪拌スピードが落ち、炒りムラの原因となります。
いろいろ悩ましいですが、今回は回転スピードを優先しました。
モータが回らなければ、豆の量を減らして対応することにします。
(もともと、豆の量を減らして焙煎しても仕上がりはあまり変わらないことは実験済みです。)
- 回転数:60-70rpm
- 電圧:110V
- 回転方向:CCW
- 軸の形状:TypeB
を選択します。 電圧、回転方向、軸の形状は注文確定後にメッセージで連絡しないといけないので注意
(サイトにも記載があります。)
注文して3週間ほどで到着しました。
カップリングとは、モータの軸を別の軸とつなげるための道具です。
今回は、攪拌棒とモータの軸を接続します。
以下の図の赤枠の部分の機能です。
ちなみに以下の写真が元々のカップリング。
引張ばねでできていて、軸に差し込むだけのシンプルな作りです。
上下移動や急な衝撃を吸収できるようです。
モータの軸径が6mmのものを入手できれば、そのまま流用することができます。
しかし今回はモータの軸径が7mmなので、別途入手する必要があります。
Amazonにちょうど良いものがありました。
6mmと7mm軸をつなぐことができます。また、スリットがばねのようになっているため、衝撃を吸収してくれることが期待できます。
修理の手順
1. 分解
チャフと豆を入れるケースを取り出しておきます。
ねじは外す必要はありません。そのまま外せるものだけ外します。
サイドパネルを外します。6か所のねじを外します。
サイドパネルを外す際には、排気用ファンのケーブルが基盤に接続されているので外したほうが良いです。
マイナスドライバーなどで慎重に
蓋部分のパーツのねじを外します。
反対側にもあるので、計4本です。ねじを外せば、部品は持ちあげて外すことができます。
上部枠のねじを外します。ねじは2本です。
パーツは嵌め合わされたうえでねじ止めされているので、外すときはハメあわされている個所を確認してください。
窯とボディの接続部のねじを外します。ねじは2本です。
ここまでくれば、窯の部分と本体の基盤部分を分離することができます。
12年の汚れがすごいことになっていますね。
窯側にモータがついているのが見えます。
2. 新しいモータの接続
モータとカップリングを新しいものに付け替えます。
新しいカップリングは径が太いので、取り付けるためにモータ取り付けの土台を外す必要があります。
モータは基盤にコネクタで接続されているので、取り外します。
完成するとこんな感じ。
あとは、モータのコネクタを元々のモータのものを取り付けてください。
3. その他もろもろ
ここまでくればあとは簡単です。
- 線をより合わせてはんだ付け(シンクロナスモータは線の極性はありません。どちらにつないでもいいです。)
- 絶縁テープか熱収縮チューブで絶縁保護
- 基盤にコネクタを取り付けて動作チェック
- 動作がOKならば、組み立てて元に戻す
という感じで無事に修理が完了です。
ついでに中の掃除をしても良いと思います。特に排気ファンは掃除をしたら見違えるほどに風量がアップしました。
参考情報
参照動画中では、日本電産のD126Z60MCを使っています。
ちょっと調べたところ、今回私が使ったモータよりも出力は低いんですよね。
http://www.kyohritsu.jp/eclib/OTHER/CATALOG/MOTOR/d5n12.pdf
でも、動画を見ると特に問題なく動作しているように見えます。
何でだろうなぁ。カップリングが柔軟性があるから脱調しづらいのか、今回私が選んだモータが70rpmで少し早いからなのか。
もしかして220V仕様の場合のトルクかもしれないです。うーん、わからん。
もし手に入るのであれば、D126Z60MCの方が手軽で良いですよ。カップリングも使いまわしできるので。
あとがき
今回用いたモータは、オリジナルよりもトルク(回転する力)が少し弱くなってしまいました。
そのため、豆を規定量入れると回転が途中で止まってしまいます。
豆の大きさや水分量にもよりますが、7割程度までが焙煎できる限度のようです。
私はあまり大量に焙煎しないので困らないですが、もし困る方は
- より出力の大きいモータを購入する。
- 同型の回転数の低いモータを購入する(ただし速度が遅くなることによる影響は不明)
といった対策をとってください。
あー、久しぶりにコーヒーが飲めました。幸せです。
あと10年くらいよろしくお願いします。